手塚治虫著 名作『火の鳥』(未来編)まとめ・感想
前回の「黎明編」に引き続き今回は
「火の鳥 未来編」のまとめ・感想を記したいと思います。
手塚治虫著 名作『火の鳥』(未来編)まとめ・感想
『火の鳥』作品説明
1954年から手塚治虫がライフワークとして発表してきた漫画作品である『火の鳥』。
古代から未来、地球や宇宙を舞台に人間や生命の本質について
不死鳥とされる「火の鳥」と関わり翻弄され続ける人間模様を描いた作品です。
「黎明編」「未来編」「大和編」「鳳凰編」「復活編」「望郷編」「乱世編」「宇宙編」「太陽編」と複数の編から成り立っており、全てが1つの物語で完結しています。
過去と未来を行き来しており、作品全体で無限の輪廻転生を表した作りになっている本作。
不死とは何か?
幸せとは何か?
人間とは何か?
生きるとは何か?
いつの時代においても変わらない人間のテーマや苦悩に寄り添う作品です。
『黎明編』ストーリー
西暦3404年、地球は死にかかっており、人類は深い地下に都市国家を建造して、そこに住んでいました。 メガロポリス・ヤマトの2級宇宙戦士・山之辺マサトは、宇宙生物ムーピーの変身した娘タマミを隠していたために、当局から追われることになります。 マサトとタマミは、メガロポリス・レングードへ亡命しようと、荒れ果てた地上へと脱出し、火の鳥にみちびかれて、猿田博士のドームにたどり着きました。 猿田博士は、そこで絶滅した生物をよみがえらせようと、ひとり人工生命の研究をしていたのです。 一方、地下都市では、ついに最終戦争が勃発し、人類は絶滅してしまいました。
(手塚治虫オフィシャルサイトより)https://tezukaosamu.net/jp/manga/399.html
『黎明編』感想
前回の黎明編の舞台が古代だっただけに今回の未来編は振り幅がすごいと感じました。
時間軸で言えば『火の鳥』のラストを飾る作品です。
人類が滅亡しまた新たな生命が生まれるという始まりのような終わりのような、
輪廻転生そのものをこの2巻で体感できた気がします。
科学が究極まで発達した先には衰退が待っているということ、
文明の進化の先では過去の文化がもてはやされるということ。
矛盾しているようで 人間とはこういうものだと提示された気がしました。
また何よりも、技術の進歩によって無になっていく人間。
機械の知性だけを頼りに頭を使うことができなくなる人間。
が増えることによって起きる悲劇の愚かさも痛烈に描かれていました。
これらは現代日本にも当てはまっている部分が多く、
昔の作品なのに皮肉めいているなと感じました。
ラストを締める火の鳥の言葉、
【人間だって同じだ。どんどん文明を進歩させて結局は自分で自分の首を絞めてしまう。
でも、今度こそ信じたい。今度の人類こそきっとどこかで間違いに気がついて
生命を正しく使ってくれるようになるだろうと。】
というこの言葉に「火の鳥」を通して作者の願いが込められている気がしました。
おわりに
正直、めちゃくちゃ深い未来編です。
この巻は最初に読むも最後に読むも、これだけ読むも成り立つ一冊だと思います。
SFに抵抗がある人も人生哲学として大人になった今、
改めて読んでみて欲しい作品です。
一人で永遠の命を持ち続けることもある意味地獄であるということ、
孤独は心を病めるが、希望があれば乗り越えられるということ。
作者、手塚治虫さんの想像力と考えに感服すること間違いなしの一冊です。