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四季の名言 春夏

はじめに

人は言葉なしでは生きていけません。

 

言葉自身が作り上げた世界、

四季を彩る名言達を紹介します。 

 

 

是非、それぞれの四季に思いを馳せてみてください。

 

 

四季の名言

春 

『春風や闘志いだきて丘に立つ』高浜虚子

 

出会いと別れの春、

春風に吹かれながらふつふつと湧く

闘志を胸に抱いている人物像が読み取れることでしょう。

 

老若男女、あなた自身の闘志を重ね合わせて読めるのもこういった名言の特徴です。

 

 

 

『「サヨナラ」ダケガ人生ダ』井伏鱒二

卒業、転勤、退職。

春は人の移動が多いものです。

別れる友と酒を酌み交わしながら背中を押す

力強い別れ言葉を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

 

『小鳥ノヨウニ幸福デス』芥川龍之介

手紙の全文はこうです。

「私はあなたを愛しております この上愛せない位愛しております

 だから幸福です 小鳥のように幸福です」

 

こんな美しい求婚の手紙を貰ったら

たとえどんな愚男であったとしても

クラっときてしまうのが女の性ではないでしょうか?

 

 

 

『私は生かされている。野の草と同じである。路傍の小石とも同じである。
生かされているという宿命の中で、せいいっぱい生きたいと思っている。』 東山魁夷

精一杯生きるということは難しいことです。

しかし、生かされていると思うだけで幾らか救われる感覚があるものです。 

 

 

 

『春は曙。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこし明りて、
紫だちたる雲の細くたなびきたる。』清少納言

春は明け方がいい。
ゆっくり白んで山の端が薄明るくなって紫雲が細くたなびいている様子は
たまらなく素敵よ。と

当たり前の日常を切り取るユーモアとセンスが感じられます。

 

 

 『のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳ねの母は死にたまふなり』斎藤茂吉

赤い喉のツバメとは口を開けて餌を欲する雛のことです。
死にかけている母との対比を鮮明に想像できるでしょうか?

 

 

 『雀の子そこのけそこのけ御馬が通る』小林一茶

 大名行列が人払いをするときに使った言葉。

それが子供の遊び囃子として変化しました。

雀の子に向けて教えてあげている優しさが感じられます。

 

 

 

『五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする。」萩原朔太郎

5月にはこの歌のように季節を快くとらえ貴族のように感じる一方、

五月病といった気が滅入る症状を受ける人もいるものです。

 

 

 

『東山の新緑が花よりも美しく、赤みの差したくすの若葉がもくりもくり八坂の塔や清水の塔の後ろに浮き上がって眺められる頃になると、流石に京都の町街も遊び疲れた後の落ち着きを見せて来る。』志賀直哉

美しさを「もくりもくり」と表現した文章。

新しい表現を使ってでも表したいほど新緑の京都は美しいということなのでしょう。

 

 

『空だけが素敵に晴れている。明日も天気に違いない。』寺山修司

好きな人を想い書き連ねたラブレターの締めの言葉。

 

あなたを思うと心が乱れ、他のことが手につかないけど

空だけが素敵に晴れている。

というこの感受性に心動かされるものです。

 

 

『渓流で冷やされたビールは、青春のやうに悲しかった。』中原中也

今やあまり見ることのない光景ですが、

小川や渓流で冷やされた飲み物はキンキンに冷えていて 

その様子に青春を重ねる独特の表現法こそ若くして亡くなった中也の魅力でしょう。

 

 

『元来室内の灯し火は、冬は幾らか明るくし、夏は幾らか暗くすべきである。』谷崎潤一郎

心を落ち着ける情景を室内に求めたときにこうすべきだということ。

エアコンやテレビなどが普及する以前、

四季の移り変わりを室内で味わっていたことでしょう。 

 

 

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